カテゴリー「KDI」の12件の記事

2009年4月19日 (日)

「知識資産経営」って何だ?

KDIとしても、KM学会のベンチマーキング部会でもご一緒させていただいている、NTTデータの小豆川さんが、「知識資産経営と組織パフォーマンス ~人材・知識・ICTの融合の時代」という、すごく意欲的な本を出版された。

でも、「知識資産経営」って何だろか?って普通は分からないと思う。なかなかアカデミックなつくりの本だから、こういう本を読みなれていない人には、ちょっときついかもしれない。だが、ロジックは明快で、読み進めるうちに「なるほど」とひざを打つことになる。

初期のナレッジマネジメントの失敗は、「知識≒情報」という誤解にあった。検索システムをいくら立ち上げても、組織的な知識の共有には結びつかなかった。その正反対のアプローチが、「知識≒人と人との直接コミュニケーションで伝わるもの」という考えだった。これらの考えを「コード化戦略と個人化戦略」の違いとしてとらえたりもした。だが、小豆川さんの「知識資産経営」は、これら二つのどちらかに与するのではない、第三の道を示したものだ。

知識資産を企業の競争力の源泉となる知識(暗黙知・形式知、なんでもよい)の総体と捉え、その「知識資産をICT(情報・コミュニケーション技術)で扱える能力」に着目したのだ。つまり「知識をレバレッジ可能な組織知として活用する能力」が、NTTデータの知識資産経営と言ってよいだろう。

決してやさしい本ではないが、目に見えない人と知識と経営の関係をいかに捉えていくことができるのか、という学術的アプローチの魅力を堪能できる一冊だ。

2009年2月22日 (日)

「トヨタの社員は机で仕事をしない」のかー!

新しい本ではないと思うが、若松義人氏の「トヨタの社員は机で仕事をしない」を読んだ。現場だけではない、トヨタではホワイトカラーも机で仕事をしない、というのがこの本の新鮮なところだ。

「机で仕事をしないホワイトカラー」のポイントは、「自分の仕事がなくなるまで改善するのがホワイトカラーの仕事」、「資料は、紙量、死量と考えよ。資料は少なければ少ないほどよい」、といったところに、よく表れている。つまりホワイトカラーの仕事は、「ない方がいい」という前提に立っているのだ。だから、事務所でパソコンに向かっていると、「おまえさん、なに事務をとってるんだ。現場に行って、ひとつでも改善してこい!」と怒鳴られる。

私が何より驚いたのは、この「事務をとる」という何とも言えない表現だ。「休憩をとる」のような、なんだかやってはいけないことをこっそりしているような、うしろめたさを感じさせる。最近のオフィスでは、おしゃべりしていると「仕事をしていない」と思われるから、皆、パソコンに向かってパチパチやって「仕事をしている」ことになっている。普段から、「一人でパソコンでできる仕事は、家でやってこい!」と半ばジョーク、半ば本気で叫んでいる私としては、なんとトヨタでは「事務をとる」と言うのか!と大喜びした。

これからの組織には、ナレッジワーク、つまり新しい目標を自ら設定して、オープンに協業しながら、コトを企て、多くの人に働きかけ、今までにない価値を創出していく仕事が、なにより重要になる。そのときのワークスタイルは、オフィスで朝から晩までパソコンに向かっているのではないし、会議室でパワーポイントを眺めているだけでもないだろう。

ナレッジワーカーの「新しい現場」が必要になる。私は、それこそ「フューチャーセンター」であろうと考えている。あらゆる情報が一つの空間に集まり、壁全体に可視化され、そこでワイガヤしたり、ファシリテーターの助けを得ながら組織横断のセンスメイキングをしていく場。それがナレッジワーカーの現場になったとき、本社に行く理由は、パソコンを打ちに行くのではなく、創造的なセッションに参画するため、ということになるだろう。

いつの日か、日本中の本社のあらゆる空間が、フューチャーセンターとしてリデザインされる時が来るだろう。トヨタの本社で、「私たちの現場はフューチャーセンターだ。昼間っから事務などとっているな!」という声が聞こえる日も遠くはないかもしれない。

2008年12月17日 (水)

フューチャーセンターがもたらす変化

あなたが、自社の中心にフューチャーセンター、つまり「未来志向で現実の問題を解くための場」を作ろうと決心したとしよう。

それは、どのような場を作ることになるのだろうか?
それは、どのような効果をもたらすのだろうか?
それは、企業経営をどのように根本から変えてしまうのだろうか?

これらの疑問に答えていきたい。

まず、場の作り方には次のようなバリエーションがある。
・経営企画部門のような「本来ハブとなるべき部門」をフューチャーセンター化する
・本社の誰もが来るフロアに「象徴的な場」としてフューチャーセンターを作る
・本社の1Fなど、お客様も来れる場所にフューチャーセンターを作る
・吹き抜け階段まわりなど、点在する出会いの空間をそれぞれフューチャーセンター化する
・商品企画部門、マーケティング部門、技術企画部門など、個別具体的なテーマごとにフューチャーセンターを作る

場の効果には、「複雑な問題を解ける」ということと、「継続的にその知識を蓄積・活用できる」ということの二点がある。たとえば、次のようなことである。
・未来シナリオを作るには、社会の持つ様々な不確定要素を勘案する必要がある。そのような情報を継続的に蓄積・活用していくことに大きな価値がある。
・ビジネスモデルアイデアを出すには、取引先や顧客企業の変化、自社の既存の枠組みを超えた発想が必要。
等々だ。
今までも未来シナリオや新ビジネスモデルを作ろう、という努力は各社してきたであろうが、その議論は使い捨てになっていなかっただろうか。一つのタスクで議論したことが、翌年の別タスクでテーマが近くても、その過去に培った視点を生かしてはいないだろう。

複雑な問題を組織を超えて解く、ということになると、「問題を単純な問題に分割して各自に割り振る」という、近代の管理制度が立ち行かなくなる。その結果、多くの企業組織は分業システムを崩壊させ、協業システムへの移行を成し遂げるだろう。

2008年12月15日 (月)

「未来を経験する場」でイノベーションハブを育てる

フューチャーセンターは、「未来を経験する場」である。毎日現在の問題解決に明け暮れている社員が、フューチャーセンターに来て対話をすることで、「日常を未来志向で考えられるよう」にすることが、日本企業にとってのフューチャーセンターの最大の意味ではないだろうか。

フューチャーセンターに来ることで、社員はこれまでに協業してきた人たちと、まったく異なる多様な人々との対話を経験する。創造的な空気の中、異なる背景を持つ者どうしが、相手に共感しながら、相互に尊重し合って対話を続ける。そうすると、「どうしていつもは、こういうふうに楽しく話せないのだろうか?」と感じて来る。それによって、フューチャーセンターから自分のオフィスに戻ったあとも、その社員の日常は大きく意味が変わってくる。

フューチャーセンターは、いつでもオープンに「複雑な問題」を待っている。もちろん、複雑な問題とは、きわめて主観的なものである。どんな問題が挙がってくるだろうか?例を考えてみたい。
「お客様に今ない商品についての問い合わせを頂いた。誰に言えばいいのだろうか?」
「テレビでスーダンの国際援助の難しさについての報道を見た。うちの会社にも、何かできることがないだろうか?」
「保険会社向けのシステムと、自動車販売店向けのシステムで、共通部分をプラットフォーム化して開発コストを30%ダウンさせられないだろうか?」

フューチャーセンターには、誰かが単純な答えを持っているような問題ではなく、さまざまな解釈があり得たり、利害関係者が多かったり、といった少し複雑な問題を誰もが持ち寄ることができる。ファシリテータは、これを高い視点で受け取り、問題を切り分け、適切なイノベーションハブの人たちを集めてワークショップを開催する。

こういった「経験の場」の開催を重ねることで、次のような原体験を積むことができる。これは、イノベーションハブ人材を育てる土壌を作る上で重要なことだ。
・複雑な問題を組織横断で解くことができる、という成功体験を得る。
・イノベーションハブとの対話の機会が増え、発想方法を学ぶ。
・問題は論理だけで解くのではなく、感情で解くものでもあることを知る。
・対話のファシリテーションによって、結論が大きく変わる。

もう一つの経験教育として重要なポイントは、フューチャーセンターで「ナレッジブローカー」(シュルンベルジェ社の制度で、地球上のあらゆるところからの問い合わせに対して、答えられる人を瞬時に探して紹介する専門職。シュルンビルジェ社ではナレッジブローカーを経験した人材を二段階特進させるほど、この仕事での能力向上を公式に認めていた)の仕事を担うことで、会社の全体像を把握でき、さらに大きな人脈網を構築することが可能になる。

つまり「未来を経験する場」での学習には二通りあり、フューチャーセンターに現場の問題を持ち込むことで、今までにない経験を得ることが一つ。もう一つは、フューチャーセンターでナレッジブローカーを担うことによって得られる経験知だ。これら二通りの手法で、イノベーションハブの育成を仕掛けることができるはずだ。

2008年12月14日 (日)

フューチャーセンター: イノベーションハブを集める場

イノベーションハブ(創造的な問題解決や価値創造のネットワークのハブとなっている人)は、組織の中に点在化し、経営からは見えにくい。正式な役割ではないので、命令で動くわけでもない。社会へのインパクト、経営トップの意志、顧客の感動など、彼ら彼女ら個人の価値観に響かなければ、協力は得られない。

イノベーションハブを集め、未来志向で複雑な問題を本質から解き明かす「フューチャーセンター」を立ち上げることで、経営トップは、その意志を伝えることができる。

欧州で立ちあがったフューチャーセンターは、「未来志向で対話するための場」だ。フューチャーセンターには、(1)五感を刺激する新しい経験ができる、(2)複雑な問題が解ける可能性がある、(3)多様な人と安心して対話ができる、という期待感を持って人々が集まる。

そこには毎日更新されるキラーコンテンツ、有識者フィードバックなど、つねに有益な情報が得られる期待感がある。インパクトのある空間、対話しやすく、気付きが得られやすい場づくり、そしてよいファシリテータがそこにはいる。イベント性があって、よくデザインされたワークショップに、魅力あるゲスト、多様な参加者が来る。それがフューチャーセンターの魅力だ。

Futurecenter

組織の人と人のつながり(ソーシャルネットワーク)のなかに、「ネットワークハブ」を見つける。ネットワークハブの中から、問題を本質から解いてくれる「イノベーションハブ」の役割を担う人を見つける。そして次は、イノベーションハブが集まる「フューチャーセンター」を用意する。

それができれば、その結節点には、社会の様々な知が集まり、そこで新たな価値が生み出されることになる。

「強力な個」が組織を動かしている

生産性と創造性を共進化させよう、ということを一つ前の記事で問題提起した。

ここでは、「圧倒的な創造性によって生産性を高める」ということが、組織の内外ですでに起きている、ということを見ていきたい。

まず、自社の成功事例、うまくいった仕事のやり方を思い出してほしい。自社の常識をくつがえし、組織を超えたコラボレーションが巻き起こり、その結果、大きなイノベーションが起きたときのことを。そこには、どんな成功要因があっただろうか?

言い当ててみよう。そこには、「強力な個」がいたのではないだろうか?このことは今まで、「あの人だからできた」という、能力や個人技の伝説として扱われてきたのだと思う。しかし、この「強力な個」は偶然ではなく、もっと合理的に説明のつくものなのではないか。

「ネットワークハブ」というアイデアがある。シックスディグリー(世界中のだれとでも、6人を介せばつながっている)は、多数のネットワークを持つ「ハブ」の役割を担う、少数の人によって実現されているというものだ。

会社の中にも、組織を超えて人と人をつなぐ、情報を伝達する「ネットワークハブ」の人がいるはずだ。その中に、「強力な個」が潜んでいるのではないだろうか。

その人が、たんに情報を流す、人を紹介する、というだけでなく、「問題の本質を解きほぐし、組織を超えて適切な人を集めて、創造的に問題を解いてしまう」。そういう人がいつも、イノベーションの手前にいるのではないか。「ネットワークハブ」の中でも、そのような創造的な問題解決をしてくれる人を、「イノベーションハブ」と呼びたい。「強力な個」は、このような「イノベーションハブ」なのではないだろうか。

イノベーションハブは、周囲の社員からすれば、「現場の課題を持ち込むと、本質的な問いに高めてくれる人」だ。こういう人たちを会社の機能として明確化していく、もっと目立つように、誰からもアクセス可能にしていく

そこで、問題をこう定義してみる。インフォーマルに組織を超えて問題解決する「強力な個」を、会社の役割として、組織機能としての「強力なイノベーションハブ」に変えていけないだろうか。

イノベーションハブが表に出ない理由は、二つある。
一つめは、自他共に認める「強力な個」であるイノベーションハブの場合。彼ら彼女らにとっても、これは本業ではないからだ。権限を持つ「強力な個」は、通常業務のパフォーマンスの高さが評価され、副業としてイノベーションハブの役割を果たす。起業家精神に富んだ、スーパースターだ。だが表だって、このことが私の仕事だと言うことはない。
もう一つは、イノベーションハブが、社内の「変わり者」と思われている場合だ。この人たちは、会社の短期志向の戦略に憤り、会議でもテーブルをひっくり返すタイプだ。どちらかというとネガティブな強者というレッテルが貼られているが、社内外に豊富な人脈を持ち、本質をつかむ力に長けている。社内に敵が多く、やっかいがられて出世していない。

これら二つのタイプのイノベーションハブをどうやったらうまくネットワーキングできるだろうか。彼らの持つ能力をうまくコーディネートできるだろうか。このことが、新しい経営思想を実現するための成功要因に違いないのだが。

「イノベーションハブの活用」が、「問題を単純化して分業して解く企業文化から、複雑な問題を本質から解き明かす企業文化への体質変容」につながるのではないだろうか。そのことを今、必死に考えている。

まず「生産性」、それから「創造性」なのか?

企業のトップや経営企画部の人たちと、イノベーションや未来シナリオなどの話をしていると、必ず出てくる議論が、「そういうことは我が社にとってきわめて大切なことだ。だが、まだ今は足下をかためる時期だと思っている。情報の共有によって生産性を高めて、それから未来を考える場をつくっていきたい」、と。本当にそれでいいのだろうか?まず生産性を高める、などということが本当に可能なのだろうか?

とにかく多くの企業が、生産性を高めることに躍起だ。景気が悪くなり、経営のトップライン(売上)が伸びなくなってくると、経費削減、コスト削減、生産性向上、の大合唱となる。イノベーティブな思考は、「これを乗り切ってから」ということになる。

しかし、真に生産性を高めるためには、そもそもやらなくてもいいことをやらない、ということが一番大事なのではないだろうか。部分最適で、場当たり的な改善だけでは生産性向上にも限界がある。今の組織には、問題の本質を考えるための、創造性が圧倒的に欠如している。

「生産性課題」は、効率性追求の限界に気づかないことに根っこがある。これは本質思考、創造性の欠如から生まれる。このようなマネジメントの下では、社員が考えなくなり、受身の姿勢が蔓延する。手段の目的化が進み、意味を考えずに改善施策を重ねる。生産性が見えない、上がらないと悩みながら、間違った努力を続ける。組織は疲れ、社員は将来に希望を持てなくなる。

こんな状態に陥っていながら、「生産性の問題をこなしてから、そのあと将来のための創造性に取り組む」などと言っていて大丈夫なのだろうか?

視点をもう少し高くしてみると、短期志向の経営管理は、未来への準備をことごとく後回しにしていることになる。長期的な組織改革、人材育成、市場創造にまったく手が回らない。一部の部門に任せるだけで、会社全体の資源や焦点を当てて取り組む企業は、ほとんどない。

新しいビジネスが生み出せない、顧客満足を根本から高められない、社員の活力が低下している、と言われながらも、この10年、ずっと解決されずにきている。これを「創造性課題」と呼ぶならば、これらのことはすべて、生産性至上症候群(とにかく目先の改善に躍起になる病気)の生む当然の結果である。

問題を単純化して解こうとするので、社内外の叡智を結集することなく、ローカルに、スピード重視で、とりあえずの意思決定をしてしまう。しかし多くの企業で、生産性向上と創造性向上の取り組みは、切り離されてバラバラになってしまっている。その結果、イノベーションのスピードが高まらないのだ。きわめて残念だ、創造性を発揮すれば、もっと根本的に創造性を上げられるのに。

では、問いかけてみよう。「生産性と創造性の課題は、同時に取り組めないのだろうか?」

生産性課題と創造性課題は、どちらも「部分最適問題」だと言っても、言い過ぎではない。部分最適では生産性は高まらない、部分最適では創造性は発揮できない。矛盾に立ち向かい、本質を解き明かそうとしなければ、生産性も創造性も高まらないのだ。

部分最適を超えて、生産性と創造性を同時に高めるための鍵は、「問題の本質を捉える力」があるかどうか、「最適な人を集めて対話する力」を持っているかどうか、そして何より大切なことは、「一貫した思想をもって継続的に取り組む力」があるかどうかである。その結果、組織の壁を超えて、複雑な問題を解決できるようになる。全体の生産性を上げることができる。新しいイノベーションが生まれやすくなる。

そう、生産性と創造性を分けて考えない。それが何より大事なのだ。
このことが、組織を活性化し、社員の毎日をいきいきとしたものに変えていく。

会社の発想の根っこを作る、経営トップや経営企画部が発想を変えて、「生産性と創造性を共進化させよう」、「問題を単純化して分業するのではなく、複雑な問題を組織を超えて解けるようにしよう」と考えることが、すべての始まりである。経営の企画をするということは、社員や社会の将来に対して責任を持つことなのだ。

経営の常識をひっくり返す必要性あり

プレジデントの中嶋さんに、カヤックという会社の新しい本を紹介していただいた。以前、鈴木さんの勉強会で、柳澤さんとはお会いしたことがあり、その時から半数の社員がハワイに1ヶ月間滞在する制度とか、破天荒な経営を実践していて、びっくりしたことを思い出した。

この本の面白いところは、経営の基本を愚直に語っているところだ。経営理念の大切さや、CSRは経営そのものだ、等々、まるで小林陽太郎のようだ。正直、普通の会社と比べると破天荒なことをやっている会社なのだが、逆にすごいまともなのではないか?と考えさせられる。

そこで考えなければいけないのが、今の大企業が間違った経営をしているだけじゃないのか?ということだ。社会が大きく変化する中で、企業経営は、常識から大きくズレ始めているのではないだろうか。二酸化炭素排出は減らすと約束しながら、その一方で右肩上がりの経営計画を株主に約束する。こういった事業計画上の矛盾は、組織の管理手法をも破綻させてしまった。市場が縮み、組織の効率化を進める中で、人事的なポストは縮小の一途である。出世を動機付けにすることが現実的ではなくなった今、企業は社員にどのような将来像を示していくのだろうか。

これまでの組織管理の基本的な考え方は、大目標を組織で分担し、個々人の目標までブレークダウンして、しっかりと管理することであった。また組織全体の抱える問題を細かく分割し、各部署で解決可能な単純な問題に切り分けて処理することであった。このような機能分化を進めることで、効率を最大限に高め、同時に安定的な品質を確保することができていた。

しかし、このような問題を切り分ける人と、単純化された問題を解く人を分けるやり方、つまり考える人と実行する人の分離は、価値を生まなくなってきている。つまり、現場を知らない企画部門と、タコツボに陥った各現場部門を大量に生み出す結果となったのだ。

長くなってしまったが、これとまったく逆の経営手法が、カヤックのそれだ。現代の経営管理手法とは真逆の組織運営だが、実は今の大企業の抱える問題の処方箋にあふれている

経営の常識をひっくり返す必要があるのだろうか。本気で考える時期に来ている。

2008年12月10日 (水)

「インプロ」(即興劇)と「創造性」、そして「対話」

「インプロ」と創造性について考えるワークショップに出た。

高尾さんがインプロの講義をしながら、自分たちで実演するという流れだ。高尾さんのトーク、哲学、指導方法、すべてが素晴らしい。感激した。

さらに、コーディネータの鈴木さんの知恵で、インプロの実演を体験した直後に、参加者全員でワールドカフェをやった。すごく刺激的だった!
テーマは、
「創造性って何だろうか?それを高めるには、どうすればよいのだろうか?」
ということ。

そこで得た気づきはたいへん貴重だった。
具体的には、
・インプロは、「失敗することは得だ」という安心感をつくる
・インプロは、「失敗したときに大きく変わる(ずっこけるとか)ことで、客にウケる」ということを心に留めることで、失敗を隠さない心構えをつくる
・こういった心持ちでいれば、人間はもともとクリエイティブなのだ
ということを学んだと思う。

このことは、その後の自分の振る舞いに、思いのほか大きな影響を与えている。残念なのは、他人が失敗をごまかそうとしたときに、「そこで大きく変わらないとお客さんに嫌われるぞ」とか言っても、相手は、「はぁ?」という感じだということだ。うぅん、もったいない。

この集まりは、その次に「対話」の重要性に進んだ。私自身はこの日に残念ながら出席できなかったのだが、先に紹介した「フューチャーセンター」は、この「複雑な問題を解くための場」であり、そのための対話の方法論や、人的ネットワークのマネジメントをするための機能であると考えている。もっともっと、掘り下げたいテーマだ。

2008年12月 7日 (日)

「フューチャーセンター」を日本で普及させる

先月行われた、経産省主催の「インテレクチャルカフェ」イベントがあった。そこで最大のテーマとなったのが、ここでご紹介したい「フューチャーセンター」という考え方だ。

この日は私も、「クリエイティブオフィス」のパネルディスカッションに登壇した。KDIのコミュニティ企業で、ずいぶんと親しくさせていただいている、博報堂、日産の変革リーダーのお二人、そしてKDIの創設者の木川田さん(現大阪大学教授)と一緒に登壇する、という幸運をいただいた。私もパネラーの一人として、どのように創造的な環境を構築すればよいのか、創造性をマネジメントすることはできるのか?といったことについての議論を楽しんだ。

フューチャーセンターの話に戻ろう。この概念は、KDIともお付き合いの長い紺野登さんが先導して日本に紹介している。紺野さんのフューチャーセンターの記事はこちら

フューチャーセンターは、「未来を考えるための場」とも、「未来志向で複雑な問題を解くための場」とも言われる。つまり、単純な経済原理だけでは解決できない問題を、一回のワークショップで、あるいはその積み重ねで、新しいビジョンを描いたり、新たな視野を得ることによって解決しようという場だ。

Fcimage

富士ゼロックスKDIは、昨年、六本木一丁目泉ガーデンタワーに日本初のフューチャーセンターを創設し、様々な企業の経営課題、イノベーション課題に対して、創造的なワークショップの実践を続けてきた。様々なセッティングが可能で、空間とツールを最大活用した、場のファシリテーションを特徴としている。

話すと長くなるのだが、フューチャーセンターの最大の意味は、「毎日の仕事が未来につながる」ということを全社員が意識するようになることだ。

KDIでは、この設計原理を構築中だが、夢は、あらゆる企業のあらゆる本社機能が、経営管理から未来創造に革新することである。その日は、思っているよりも、すぐにやってくるに違いない。ぜひ「フューチャーセンター」の動きを、注目して見ていてほしい。