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2012年7月 3日 (火)

新しい働き方が生まれる「トレンド」と「兆し」

1. 私自身の「新しい働き方」

日曜日に「働き方の未来」を考えることを宣言して、月曜日の朝にはfacebookでたくさんのフィードバックをいただきました。「フューチャーセッションやるなら、一緒にやろうよ」という申し出もいただきました。ありがとうございました。

そして、濃密な対話をたくさんの人と行いました。コクヨの齋藤敦子さん、乃村工藝社で「未来の場づくり」を考えている方々、エコノミスト誌の記者さん、ミラツク代表の西村さん、そして慶應SFCの井上英之さん。なんてぜいたくな一日でしょうか。この日は、私にとって特別な日ではなく、このほかにも別のミーティングもありましたし、西村さんと井上さんとお会いしたのは偶然でした。

こんなことが日常なのです。会う人、会う人と、「日本をこうしていきたい」と夢を語り合い、その場で仕掛けを構想し、周囲を巻き込んでいきます。このスピード感が、私自身の実感する「新しい働き方」です。

でも、「働き方の未来」が重要になってくるという根拠は、そんな個人的な話だけではありません。


2. マクロなトレンド

ラッキーにも、午前中からこのテーマで、コクヨのWORKSIGHT編集人である齋藤さんと対話することができました。彼女とは、日本企業の置かれているマクロなトレンドから、「働き方がどう変わらざるを得ないか」という議論を行いました。

日本の大企業は、製造業もシステムインテグレーション企業も、生き残っていくにはアジアに仕事を移していくしかありません。

一つは、人件費です。某自動車メーカーのナレッジマネジメントの仕事は、数年前まではベテランの暗黙知をデータベース化することでしたが、今は日本人の持つ知識をインド人にどう分かりやすく伝えるか、になっています。グローバルなナレッジマネジメントの行く末にあるのは、「日本にはオペレーショナルな仕事は残らない」という結果です。つまり、コアの技術者、企画戦略系スタッフをのぞいて、多くの日本人社員の仕事がなくなるのです。

もう一つは、市場の縮小です。日本は人口が右肩下がりですから、市場としての魅力がなくなっていきます。現地設計・生産・消費を徹底していくと、日本の大企業は、日本の企業というイメージを捨てて、グローバル企業として生き残っていくことになります。

日本の大企業は、このようなトレンドを押し進めながら、社員に対しては「日本には創造的な仕事が残る」とだけ言って、「多くの人の仕事がなくなる」ことをはっきりと伝えていません。社員も、「自分の仕事は残る」と無根拠に信じているのが現状です。

日本を大企業に任せておくと、中間層の仕事が、ぼこっとなくなります。どこかの企業のリストラが容認されれば、たくさんの企業が追随し、残るのは「一部の高給取りスタッフ」と「海外並みの給与で働くスタッフ」だけになるかもしれません。起きてほしくありませんが、起きたとしてもまったく驚くシナリオではありません。


3. ミクロな兆し

その一方で、明るい兆しもたくさん見えてきています。コクヨも、ヒカリエにMOVという「異文化・異分野が出会うための場」を作っていますし、特に渋谷には、co-baをはじめとし、たくさんのコワーキングスペースが根付いてきています。フューチャーセンターも同様ですが、どの場も、「まずつながって、そこから価値を生み出す」ことを促進するためのプラットフォームとして機能しています。

今のところ大企業から見たこのコワーキングの動きは、「フリーランスの間に起きている流行で、大企業には関係がない」と映っていると思います。しかし、私にはそうは見えません。彼ら彼女らのコラボレーションのスピードは、とんでもないスピードで、まさにプロジェクト型、オープンイノベーション型の仕事のあり方を実践しています。企業で1ヶ月かけて検討する企画が、こういう場では、1日でプロトタイプできてしまうのを実感します。

私は、このように「組織の役割に閉じない働き方」を実践する人がますます増えていき、結果として「グローバル企業がリストラする中間層」と同じ規模感で、「ローカルな価値を生み出す自由ワーカー」という大きな集団を作り上げるのではないかと思い始めています。

そして齋藤さんとは、これからの2年間、マクロなトレンドを収集・整理すると同時に、ミクロな兆しをしっかりと取材し、それらを集めた「働き方の未来」フューチャーセッションを開催していくことを話し合いました。


4. 地域活性化と働き方

働き方の変化は、企業だけの問題ではありません。

乃村工藝社とは、地域活性化についての議論をしました。人口が減少していく中、地域の経済を立て直すためには、既存の縦割り発想を超えた、「面で価値を生み出す」プロデューサーが必要になります。たとえば、一つの文化施設や商業施設を作るにしても、既存の商店街の価値も一緒に高めるような運動を仕掛けるなど、地域全体の価値を高めていくセンスが必要になります。

このような仕事は、東京のゼネコンやシンクタンクには、なかなか難しいでしょう。何より、この努力が短期的には報われないからです。いきおい、このような「地域の価値を高める」仕事を担うのは、地元を深く理解している「ローカルな価値を生み出す自由ワーカー」になるのです。彼ら彼女らの仕事は、マス市場を相手にするものではありませんので、プロジェクト規模は小さくなります。しかし、創造性の発揮度合いはとても大きなものになります。社会起業家精神に満ちあふれた創造的な仕事が、地方にたくさん生まれると言っていいでしょう。

フューチャーセッションズでは、企業(ビジネスセクター)、行政・地域(パブリックセクター)、NPO(ソーシャルセクター)を横断した、あらゆるフューチャーセッションを提供しようとしています。企業の課題を社会起業家が一緒に考え、社会をよりよくする商品を一緒に生み出すこともあるでしょう。地域の問題を企業が一緒になって解決する、ということもあるでしょう。子育てしながら働く環境づくりなどの社会的課題を企業と行政が一緒になって達成する、ということもあるでしょう。今必要なことは、人材も、プロジェクトも、セクターを超えてつながって行動することなのです。

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5. これからの日本社会を担うリーダー、フォロワー

井上さんとは、「社会をこうしたいというビジョンを掲げ、それに向かって仕事をすることを喜びと思う」リーダーをどう増やしていくか、という話をしました。一昨日のTEDxTokyoでお会いして一緒にお話しした、英治出版の原田英治さんは、「フォロワーシップがもっと注目されるべき」と語っていました。

リーダーもフォロワーも大事、という議論としてもいいのですが、私から見ると、このお二人の言っている人物像は、リーダーとフォロワーという異なる言葉を使いながら、ほぼ同じことを言わんとしているのではないかと思いました。井上さんの語るリーダーは、必ずしも起業家のような本来のリーダーだけではなく、例えば会社の新入社員であっても、「私はこんな仕事がしたくてこの会社に入りました」と旗を立てることができるということだと思います。もしその人の想いが、会社のビジョンと沿っているならば、この人は究極のフォロワーシップの発揮者になることでしょう。

つまり、これからの「働き方の未来」に対するヒントとして、「リーダーでありフォロワーでもある働き方」が重要になってくる、ということが言えるのではないでしょうか。

このような「新しい働き方」をする人が、確実に増えていくでしょう。それは、グローバルな外因的トレンドによって加速されるからです。また、日本の地域が求める、内発的な欲求によっても加速されていくでしょう。

私たち一人ひとりにとっては、「今の働き方にとどまる」か、「新しい働き方に移る」かが、チョイスになるでしょう。今から、「新しい働き方」を自分のワークライフの中に、試しに取り入れてみてはいかがでしょうか。

まずその第一歩として、フューチャーセッションに参加するのもいいですね。ぜひ。

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