« 「知識資産経営」って何だ? | トップページ | 事務局力の実践(6): 最高にご機嫌なチームを作る »

2009年4月29日 (水)

事務局力の実践(5): 全社イベントを実行する

「組織横断の課題を解決せよ」。役員や部長にこう言われたとき、あなたは燃えるだろうか?それとも参ったな、と思うだろうか。私なら、参ったなと思う。なぜなら、たいていの組織横断の課題解決は、失敗に終わるからだ。

失敗する理由は、数え切れない。慧眼のあなたならば、真っ先に気づくだろうが、そもそも組織横断の課題を解決するのは役員や部長の仕事であり、それを丸投げされた時点で、かなりやばい。リスクをとりたくないヒラメ社員であれば、部長の顔が立つ程度の、いわゆる落としどころを決め、各部門に根回しを行う。本質的な課題解決など、関係ない!という態度だ。こういうヒラメ社員が失敗せずに出世するなら、会社がだめになるはずだ

さて、組織横断課題は本当に解決不能なのだろうか?実は、コンサルタントをしていると、こういった課題が舞い込んでくることが多い。組織横断課題を抱えた担当者、あるいはタスクフォースの(狭義の)事務局の人たちが、藁をもつかむ気持ちでやってくる。業種・職種が違っても、持ち込まれる課題の本質は驚くほど近い組織の部分最適目標と、全体最適の目標の間のジレンマなのだ。

こういった課題でコンサルタントが腕をふるうところは、いたって単純だ。まずは論理的に部分最適と全体最適のトレードオフを明確にする。それをチャートやグラフで可視化するなどして、誰もがわかる形で論点をはっきりさせるのだ。少しだけ知恵が必要だが、難しくはない。もう一つは感情的に、部門を超えてワンチームの気持ちになれるようにする。いわゆるファシリテーションの技術で、A部門の人が、B部門の人の立場で考えるような演出をするのだ。あとは、メンバーが自分たちで答えを出していく。もともと問題解決能力は高い人たちが集まっているので、ボトルネックを取り去ってやれば、ゆうゆうと突破していくのだ。

このようなコンサルタントの技術に、事務局力のヒントがあふれている。しかし、客観的立場になれる社外のコンサルタントのやり方と、部分最適の一部でもある社内の事務局のとるべきアプローチは同じではない。社内の事務局の人がファシリテーションをする場合、参加者の意識を変えさせることは容易ではない。言わずもがな、最大の成功のポイントは、部分最適の組織代表という気持ちを忘れさせて、全体の利益に没頭させることだ。

そのためには、非日常体験が何より必要なのである。社外のプロのファシリテータが入ることも、ある意味で非日常体験の一つだ。オフサイトで議論する、一緒に遊んだりお酒を飲んだりもする合宿などもその一つだろう。もっと継続的に非日常体験を味わうのであれば、Xデイを設定し、その日までにアウトプットを出さないと人類が滅亡する、というようなクライシスの演出もオプションの一つだ。問題は、嘘をつき続けなければいけないところだ。より現実的な方法は、「祭り」の演出だろう。クライシスと逆の、ポジティブなパワーを引き出す非日常体験だ。

では、事務局力をどのように発揮すれば、「組織横断課題」という誰もが避けたい問題を「祭り」というイベントに転換していくことができるのだろうか祭りの情熱を引き出すためのキーワードは、「サプライズ」だ。それは、場、プロセス、人のそれぞれの要素に盛り込んでいくことができる。

  1. 今まで考えられなかった象徴的なイベント
  2. 今までと全く異なるプロセス
  3. 今までと違うヒロイン/ヒーローが生まれる

1. 象徴的なイベント

課題解決の提言をする日を「祭り」の当日に設定する。そのためには、提言の場を楽しく、エキサイティングなものに演出する必要がある。ここで発揮すべき事務局力は、役員を動かすことだ。丸投げ役員をうまく操ろう

まず役員のところにタスクフォースの計画を提案に行く。丸投げ役員は、相談されるのは好きだ。遠慮なく、プランを持って行こう。この計画プロセスにうまく巻き込んであげれば、役員は「自分のプラン」だという気になってくれて、支援をしようという気になる。そして誘惑をする。「最終報告の場は、社長に対してタスクメンバーが想いをぶつける場にしたいんです。組織を超えてワンファームとして動いていくことをメンバーが熱く語り、それを役員が後押しするという場の演出をさせてください」、と。この台詞をまじめに言っていたらヒラメ社員だが、あくまでこれは、役員に場をセットさせる手練手管だ。そこを切り分けて、ロビイストになりきることも、事務局力の重要なスキルだ。

あとは象徴的なイベントをデザインし、役員を社長へのメッセンジャーとして操れば、まずエキサイティングな場のセットだけはできる。そして、この象徴的なイベントをポジティブな気持ちで受け入れられるよう、メンバーにうまく伝える。「祭りだ。楽しもうぜ」、と

2. 異なるプロセス

次に、タスクフォースの進め方を変えよう。従来のやり方は、目標を共有し、現状分析して、課題を洗い出す。そしてWhyを重ねて真因を発見する。それに対して多角的な視点から施策を検討する。いわゆる問題解決のアプローチだ。はっきり言って、つまらない。わざわざ組織を超えて有能な人が集まっているのに、こんなつまらないやり方をしているから、タスクは盛り上がらない。コミットメントも生まれない

さあ、事務局力の出番だ。発想を転換させよう。まず宣言しよう、「目標なんて、どうだっていいんです」、と。どうせ丸投げ役員の、いい加減な依頼なのだから。「この場を利用して、参加した皆さんの問題意識を共有し、会社をいい方向に持って行きましょう」、と言えば、参加したメンバーは「お、これはおもしろいかも」と思うに違いない。

祭り的プロセスは、まず参加メンバー各々の想いや問題意識を共有するところから始める。最終的なゴールは、各人の問題意識を最後に社長にぶつけ、会社を変えることだ。丸投げ役員の仕事を肩代わりすることではない。いきおい、タスクフォースの活動は、各人の問題意識の整理と定量化、解決方法の検討になる。自分の問題意識をすばらしいメンバーとの共同作業で社長にぶつけていくわけだから、エキサイティングに決まっている。

一言付け加えておくと、このタスクフォースのアウトプットが、丸投げ役員を喜ばす結果になることは疑う余地がない。このように、両者にとってベストの解を出させる演出が、事務局力の真骨頂だ。

3. 違うヒロイン/ヒーロー

最後に、祭りは誰もが主役である。だからこそ、いつもは日の当たりにくい人に、あえて象徴的にスポットライトが当たるようにする。いつもと違うヒロイン/ヒーローを生み出す演出をするのだ。たとえば、総務部が改革の旗手になる、女性チームが新商品を企画する、若手チームが長期戦略を立案する、研究開発者がコールセンターの電話をとる、等々。つまりその会社にとって、意外性のある物語を描くのだ。意外性のある物語は、誰もが他人に語りたくなる。そして「神話」のように、この活動に対して、祭りとしての象徴性を高めてくれる。

ここで示した事務局力は、全社的視点に立った、高度なものだ。一回目からうまくいくものではない。しかし、実践を繰り返していくことで、他人に気持ちよく動いてもらう感覚が、自分のものになってくるだろう。

« 「知識資産経営」って何だ? | トップページ | 事務局力の実践(6): 最高にご機嫌なチームを作る »

「事務局力」の基本と実践」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1140210/29349241

この記事へのトラックバック一覧です: 事務局力の実践(5): 全社イベントを実行する:

« 「知識資産経営」って何だ? | トップページ | 事務局力の実践(6): 最高にご機嫌なチームを作る »