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2009年2月 7日 (土)

企業人は「社会起業家」との対話により、もっとイノベーティブになれる

2008年度の決算は、上場している製造業全体、自動車や電機などの588社の合計で赤字という結果になりそうだという。パイオニアがテレビを作るのをやめ、NECは欧米でのPC販売をやめる。日本人として、日本企業にもっと元気になってほしい、日本製品が世界中の生活をもっともっと豊かにしてほしいと思う。

イラクのクルド人を助けるために単身乗り込んだ日本人NGOが見たのは、大活躍する欧米のNGO組織が、日本の四輪駆動車、日本の無線など、日本製品を使っている姿だったという。日本から遠く離れた地では、日本人は皆無だったが、日本製品は大活躍をしていたのだ。このことは、二つの気づきを示唆する。ひとつは、日本企業は製品を通して世界にきわめて大きな影響力を持っているということ。もうひとつは、日本の開発援助が、ハードにばかり使われているということ。

このことは、何を意味しているのだろうか?日本企業の事業企画、商品企画には、この日本政府のスタンスに、共通したところがあるのではないだろうか。現地、現場で何が起こっているか、何がもっとも必要とされているのか、もっとも有効なお金の使い方は何なのか?他の国、他の企業はどんな取り組みをしているのか、自国、自社のやるべきことは何なのか?そういったことを十分に考え抜く以前に、モノを作ったり送ったりしてしまうのではないか。自分たちのできることは、そういうことなのだ、と思い込んでしまって。

もし、現地や現場で何が起こっているのか、そこで必要なものは何なのかを最初に考えたら、アクションは少し変わってくるのではないか。前線にいる人の声に耳を澄まし、共感しながら商品やサービスを設計したら、何か違いが生まれるのではないか

ソーシャルな活動をしている人たちは、「儲からない」からNPOでやっているわけではない。「必要としている人がいる」からやっているのだ。これは、「あり方」の問題だ。企業だって、儲かるために存在しているわけではない。

企業の中では、アイデアに対して「それは儲かるのか?」という質問をするのが常識である。だが社会起業家と対話するならば、「私はこの事業を通して何をしたいのか」という意味を語らざるを得ないだろう。ある意味で、企業の中での対話は楽だ。利益が上がれば、それはいいこと。法を犯してない限り。逆に利益が出なければ、それは必要でないこと。それが議論の前提と決まっているからだ。一方、社会起業家は、人生を語らざるを得ない。なぜこの事業をやろうと思ったか、その原体験を話さなければ、「本当にノンプロフィットで、つらくても続けていく」ことを信じてもらえないからだ。企業の顧客は、払ったお金がどこで使われるかをチェックしたりはしない。だが寄付をする人は、その寄付金がどこでどのように使われるのかまで気にする。つまり、社会起業家は「あり方」を徹底的に問われるのだ。

企業人は、社会起業家と話をすべきである。人のためになりたい、よりよい社会を作りたいというピュアな想いに触れるのは、自分たちの「あり方」を再考するチャンスだ。市場規模とシェアについて語るのをやめよう。すでに製品が行き届いているのであれば、そこに、さらに差別化で打って出ることを考えるのはよそう。誰かほかの人がやってくれるならば、そんなことは他人に任せて、自社でなければできない社会的な価値を生み出すことを考えよう

「あり方」が変わると、発想が自由になる。最初に市場規模を調査したりしなくなるからだ。社外に目を向け、できるだけ異分野の人、異なる文化の人と対話をしようという気になる。もちろん、「それは事業として成立するか?」をつねに考えるのは、企業人としてのベーシックスだ。だがこれは、すでにある市場の中で差別化商品を考える、というものとは180度違う発想なのだ。「今は事業として成立しない」ものにチャレンジして、「事業として成り立つモデルを作り上げる」ことができれば、それがまさに「イノベーション」なのだ。

この精神を企業人は、社会起業家から学んでほしい。社会起業家たちが企業人から事業運営のノウハウを学ぶように、企業人は社会起業家から「社会のために自分の人生をかける」という生き様、あり方を学ぶことができるだろう。

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