「トヨタの社員は机で仕事をしない」のかー!
新しい本ではないと思うが、若松義人氏の「トヨタの社員は机で仕事をしない」を読んだ。現場だけではない、トヨタではホワイトカラーも机で仕事をしない、というのがこの本の新鮮なところだ。
「机で仕事をしないホワイトカラー」のポイントは、「自分の仕事がなくなるまで改善するのがホワイトカラーの仕事」、「資料は、紙量、死量と考えよ。資料は少なければ少ないほどよい」、といったところに、よく表れている。つまりホワイトカラーの仕事は、「ない方がいい」という前提に立っているのだ。だから、事務所でパソコンに向かっていると、「おまえさん、なに事務をとってるんだ。現場に行って、ひとつでも改善してこい!」と怒鳴られる。
私が何より驚いたのは、この「事務をとる」という何とも言えない表現だ。「休憩をとる」のような、なんだかやってはいけないことをこっそりしているような、うしろめたさを感じさせる。最近のオフィスでは、おしゃべりしていると「仕事をしていない」と思われるから、皆、パソコンに向かってパチパチやって「仕事をしている」ことになっている。普段から、「一人でパソコンでできる仕事は、家でやってこい!」と半ばジョーク、半ば本気で叫んでいる私としては、なんとトヨタでは「事務をとる」と言うのか!と大喜びした。
これからの組織には、ナレッジワーク、つまり新しい目標を自ら設定して、オープンに協業しながら、コトを企て、多くの人に働きかけ、今までにない価値を創出していく仕事が、なにより重要になる。そのときのワークスタイルは、オフィスで朝から晩までパソコンに向かっているのではないし、会議室でパワーポイントを眺めているだけでもないだろう。
ナレッジワーカーの「新しい現場」が必要になる。私は、それこそ「フューチャーセンター」であろうと考えている。あらゆる情報が一つの空間に集まり、壁全体に可視化され、そこでワイガヤしたり、ファシリテーターの助けを得ながら組織横断のセンスメイキングをしていく場。それがナレッジワーカーの現場になったとき、本社に行く理由は、パソコンを打ちに行くのではなく、創造的なセッションに参画するため、ということになるだろう。
いつの日か、日本中の本社のあらゆる空間が、フューチャーセンターとしてリデザインされる時が来るだろう。トヨタの本社で、「私たちの現場はフューチャーセンターだ。昼間っから事務などとっているな!」という声が聞こえる日も遠くはないかもしれない。