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2008年12月14日 (日)

まず「生産性」、それから「創造性」なのか?

企業のトップや経営企画部の人たちと、イノベーションや未来シナリオなどの話をしていると、必ず出てくる議論が、「そういうことは我が社にとってきわめて大切なことだ。だが、まだ今は足下をかためる時期だと思っている。情報の共有によって生産性を高めて、それから未来を考える場をつくっていきたい」、と。本当にそれでいいのだろうか?まず生産性を高める、などということが本当に可能なのだろうか?

とにかく多くの企業が、生産性を高めることに躍起だ。景気が悪くなり、経営のトップライン(売上)が伸びなくなってくると、経費削減、コスト削減、生産性向上、の大合唱となる。イノベーティブな思考は、「これを乗り切ってから」ということになる。

しかし、真に生産性を高めるためには、そもそもやらなくてもいいことをやらない、ということが一番大事なのではないだろうか。部分最適で、場当たり的な改善だけでは生産性向上にも限界がある。今の組織には、問題の本質を考えるための、創造性が圧倒的に欠如している。

「生産性課題」は、効率性追求の限界に気づかないことに根っこがある。これは本質思考、創造性の欠如から生まれる。このようなマネジメントの下では、社員が考えなくなり、受身の姿勢が蔓延する。手段の目的化が進み、意味を考えずに改善施策を重ねる。生産性が見えない、上がらないと悩みながら、間違った努力を続ける。組織は疲れ、社員は将来に希望を持てなくなる。

こんな状態に陥っていながら、「生産性の問題をこなしてから、そのあと将来のための創造性に取り組む」などと言っていて大丈夫なのだろうか?

視点をもう少し高くしてみると、短期志向の経営管理は、未来への準備をことごとく後回しにしていることになる。長期的な組織改革、人材育成、市場創造にまったく手が回らない。一部の部門に任せるだけで、会社全体の資源や焦点を当てて取り組む企業は、ほとんどない。

新しいビジネスが生み出せない、顧客満足を根本から高められない、社員の活力が低下している、と言われながらも、この10年、ずっと解決されずにきている。これを「創造性課題」と呼ぶならば、これらのことはすべて、生産性至上症候群(とにかく目先の改善に躍起になる病気)の生む当然の結果である。

問題を単純化して解こうとするので、社内外の叡智を結集することなく、ローカルに、スピード重視で、とりあえずの意思決定をしてしまう。しかし多くの企業で、生産性向上と創造性向上の取り組みは、切り離されてバラバラになってしまっている。その結果、イノベーションのスピードが高まらないのだ。きわめて残念だ、創造性を発揮すれば、もっと根本的に創造性を上げられるのに。

では、問いかけてみよう。「生産性と創造性の課題は、同時に取り組めないのだろうか?」

生産性課題と創造性課題は、どちらも「部分最適問題」だと言っても、言い過ぎではない。部分最適では生産性は高まらない、部分最適では創造性は発揮できない。矛盾に立ち向かい、本質を解き明かそうとしなければ、生産性も創造性も高まらないのだ。

部分最適を超えて、生産性と創造性を同時に高めるための鍵は、「問題の本質を捉える力」があるかどうか、「最適な人を集めて対話する力」を持っているかどうか、そして何より大切なことは、「一貫した思想をもって継続的に取り組む力」があるかどうかである。その結果、組織の壁を超えて、複雑な問題を解決できるようになる。全体の生産性を上げることができる。新しいイノベーションが生まれやすくなる。

そう、生産性と創造性を分けて考えない。それが何より大事なのだ。
このことが、組織を活性化し、社員の毎日をいきいきとしたものに変えていく。

会社の発想の根っこを作る、経営トップや経営企画部が発想を変えて、「生産性と創造性を共進化させよう」、「問題を単純化して分業するのではなく、複雑な問題を組織を超えて解けるようにしよう」と考えることが、すべての始まりである。経営の企画をするということは、社員や社会の将来に対して責任を持つことなのだ。

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